孤独とワイン
「若いころには苦いけれど、熟年になると味わい深くなる、そういう孤独の中で私は生きてきた」
アルバート・アインシュタイン 宮本レオン訳
“I live in that solitude which is painful in youth, but delicious in the years of maturity.”
― Albert Einstein
アインシュタインにとって、孤独というのはワインと同じように熟成していくものだったんだろうね。
ワインはブドウに含まれる糖質をアルコール発酵させてお酒として出来上がった後も、保存状態がよければ歳月を重ねるにつれて芳醇な香りと味わいをもつようになる。
僕たちの孤独もそんなふうならいいのだけれど、下手をすると酸っぱくなったり、腐敗してゆく一方だったりする。今、熟年ばかりじゃなく、子供から中高年まで、すべての世代にわたって、そんな「酸っぱい孤独」や「腐敗した孤独」が広がっている。
いや、「腐敗した孤独」なんて、ちょっときつすぎる? ただ、少なくとも心地よい孤独ではないことは確かで、最悪の場合、自殺願望へと向かうことさえある。しかもその傾向は年々悪化している。
なぜか?
経済的な貧困から? 生きる目的が見えなくなっているから? 孤立感のただなかで何をどうしていいやらわからなくなっているから?
そう、そのすべてがからんでいるかもしれない。でも、それは二義的な、あえていえばとってつけた原因でしかないと、僕は思う。
では、何が本当の原因なのか?
それをじっくりと考えながら、徐々にお話ししていこう。